なんだかんだ言っても
学生時代を京都でともに過ごした仲間は

今でもかけがえがない


京都墨染のワンルームに
多いときには20人以上集まったか

食材を持ち寄り
酒を持ち寄り

音楽とエロの話しばっかりしていた

狭い部屋で
前戯派と後戯派と本番派に分かれて
討論をした

馬鹿ですね

でもその中で一人だけ
童貞の奴がいて

天井を見上げて
涙がこぼれれないように

「俺・・・童貞やねん・・・」

って告白して
最高潮に盛り上がった

「まだイケるって!大丈夫やって!」
と肩を叩いた

今思うと
まるで意味がわからない励ましだ

いつも最後には
かなり熱いトークになって

ケンカになったりして
朝を迎えた

明け方思い立って仲間のバイクに分乗して
琵琶湖を見に行ったりした

合宿に行っては口論になり
ロックだなんだと言ってるわりに
集団行動の中の規律にとてもうるさいところがあった

それでも時間は目一杯あった
だから目一杯しょうもないことに使っていた

でも
かけがえのない時間って
ある意味そういうものなのかも知れない


今よみがえるのは

埃と泥にまみれたような
決してきれいとは言えない思い出だけど

なんとなく
その輪の中にいるのは
面倒くさいけど居心地が良かったりもした

あの頃はまだ
うだつの上がらない連中が
必死になって夢を追いかけていた

自分にしかできない生き方を探していた

それでも
みんな一所懸命がんばって
それぞれ立派になった


そうやって
同じ時間を過ごした一人の仲間が
逝ってしまった


サンバイザーを被ってピコピコと電子音を操り
女の先輩と「シド&ナンシー」というユニットを組み
ステージで全裸になって
世の中の不条理を叫び
客席にダイブして
あげく腕を粉砕骨折するような男

ステージから客席に向かって
レコードを撒き散らして
京都ミューズホールをサークルごと出入り禁止になった

思えば
オレにとってのパンク初体験は

その男だったのかも知れない
不器用だけど優しい男だった

でも
奥さんになったナンシーと小さい子どもを残して
逝ってしまった


2年前会ったときは元気だったのにな
これで大学の同期は二人目だ


やっぱり

時間というのは
限られているもんなのかな


所詮
人は死ぬときは死ぬ

それが運命というものならば
生まれたその瞬間から死に向かっているようなものと
開き直ってしまえたらよほどいい

それでも

「明日死ぬと思って今日を生きよう」だなんて
口に出してはみるものの


やっぱりピンと来ないんだ


仲間が死んでしまった今でさえ
いまいちピンと来ないんだから


もし何かできるとしたら
とにかく生きよう

生きて笑っていよう


ピンと来なくて泣けなかった葬式を終えて
家に帰って妻の顔を見たとたん涙が溢れて号泣した


そして思った

生きて
笑っていよう



ご冥福をお祈りします


いつまでたっても熟さない
黄色いトマト