福澤幸雄というレーサーをご存知だろうか
名前からピンと来た人もいるかも知れないが
一万円札の肖像画、
天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らずという言葉と
慶應義塾の創始者として有名な
福澤諭吉の曾孫であり
60年代後半のトヨタワークスドライバーである

1969年の冬
オープンしたばかりの袋井テストコースで
5リッター新型トヨタ7のテスト中に事故死を遂げる

ストレートの終わりで突如ハーフスピンし
そのままコースアウト
コース脇の標識に激突炎上

トヨタは地元消防団が消化活動に駆けつけるのをなぜか制止して
そのまま約20分燃え盛るマシンの中で福澤幸雄は息絶えた

トヨタと静岡県警が発表した死因は
激突による脳挫傷で即死
原因はドライバーのコントロールミスというものだった

その後福澤幸雄の名誉回復を望む遺族によって10年以上に渡り裁判が続き
1981年トヨタが6100万円を支払う形で和解終結
(黒岩尚志「レーサーの死」より)

昨日とあるレース関係のコミュニティで
故・福澤幸雄氏のご遺族の方とやり取りをさせて頂く機会に恵まれた

そこには僕のようなただのレースファン以外に
当時名だたるワークスにいたようなスゴイ方や
レースに関わってきた方がたくさんいて

「あのレースのあの写真撮ったの実は私です」とか
「あのレースに参戦してました」などの
決して自慢気ではない細々としたカミングアウトに狂喜乱舞した

今世の中はひとつの新型ウィルスによって
生きるか死ぬかのような雰囲気になっていますが

確かに対抗策がないウィルスは脅威ではあるけれど
それによってもたらされている経済的な打撃と
おかしな世間の風潮の方がよほど怖いなと思う

稚拙な例えではあるけれど

昨日妻が「美容院に行ってくるね」と言うので
「それで感染したらこんな時勢に美容院なんて行くからだ!って世論に殺されそうだよね」
なんて冗談で言ったら行くのやめてました

ゴメン…😅
でもそんなくだらない世の中なんです

全部結果からしかマルかバツを判断できない人々

先を予測して
今何をすべきかを考えない人々

昨日のやり取りを通して
常に生と死の狭間で生きてきたレース関係者の方たちには
僕らにはないたくましさを感じずにはいられませんでした

コンマ何秒を争う世界
今が一瞬で過ぎて行く中

あらゆる事態を想定して
恐怖と戦いながら
ステアリングを握りアクセルを踏み込む人たちに

今僕たちが何を見て何をすべきなのか
教えられた気がします